「世界一スパコンを使う男」と呼ばれた真鍋さん 頭脳流出と話題に
https://www.asahi.com/articles/ASPB56SS3PB5ULBJ01W.html
松野は東京大学理学部地球物理学科で真鍋の四年後輩に当たり、大学院時代も含めてずっと気象学者の道を歩んできた。六九年から一年間、GFDLでも研究した経験があり、折に触れて旧交を温める関係が続いた。自身がシステム長に就いたとき、このポストは余人をもって代えがたいという思いで真鍋を地球温暖化予測研究領域長に迎えた経緯があるだけに、松野の口調はのっけから沈みがちだった。
「本当に、真鍋さんには申し訳なくてしようがない。僕がもっと環境を整備して、心地よく仕事ができるようにしてあげなければならなかったのに……。せっかく日本に帰ってきていただいたのに、日本の悪いところばかり見せて期待外れに終わらせてしまった」
「日本の悪いところ」とは、いったい何を指しているのか。松野の話にじっと耳を傾けていると、どうやら日本の官僚機構に巣食う縦割り行政の弊害を指摘しているらしいことがわかってきた。そして、その遠因は地球フロンティア研究システムを立ち上げた旧科学技術庁が、気象庁や東大気候システム研究センターとの共同研究に反対したことが“発火点”のようであった。
「地球シミュレーター計画は、スーパーコンピュータによる膨大な計算を行なうので、一年契約の研究員がほとんどの、この研究システムだけでは使いこなせない。ところが、お役人には縄張り意識や手柄を独占したい考えがあるのか、共同研究にはいい顔をしてくれなかった。コンピュータの能力や数値モデルとは何かを理解してもらえず、箱物だけつくれば君たちだけでやれるだろうという発想から抜け切れていない。こうした縦割り行政を打破して、真鍋さんのやりたいことを好きなようにやらせてあげなければならなかったのに、僕自身が力不足で……」
真鍋の辞任の責任を、松野は一身に引き受けているような口ぶりに終始したが、「お役人には日本国民全体のためという発想があまり感じられませんね」としみじみ漏らした一言が、真鍋辞任のすべてを物語っているようにも聞こえた。
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